玄関の靴

玄関をふと見たら、とても「女」という感じの靴が置いてあった。

置いてあった、というか自分の靴なので置いたのは私なのだけれど、玄関に入った形のまま脱ぎ置かれたベージュのパンプスとCHARLES & KEITHの白のパンプスが、やけに女っぽく見えたのだった。それを見て、大学生の時に美人の先輩のお宅にお邪魔したら、玄関にスーツ用ではないパンプスが置かれていて、やけに大人っぽく、女っぽく感じたのを思い出した。

私はもうあの時の先輩の年齢を超え、当たり前に玄関に「女」の靴を並べるようになったのだ。

人は変わる

Aさんと会った。私が異動になるということで友人たちが開いてくれた送別会に、Aさんも来た。

適当に飲んだ後、いつもならお茶でも飲んで解散になるのに、この日は違った。Aさんがカラオケに行こうと言い出したのだ。

私は歌が苦手である。歌うのは好きだけれど、声域が狭く声量もないので、どうしてもうまく歌えない。

Aさんも同様にカラオケは苦手なはずであった。過去に嫌がるAさんをむりやり引っ張って、一度一緒に行ったことがあるくらいだ。その時に、Aさんの歌っているところを見たいがあまりしつこくカラオケカラオケ言ってしまったので、この日も断れなかった。

あんなに嫌がっていたはずなのに、と不審に思っていると、別の友人が、Aさんが最近カラオケにはまりだしたという話をしてきた。何かきっかけでも?

妙に楽しそうなAさんと友人と、終電ぎりぎりまで歌って帰った。

 

そして今日、そういえばこの前Aさんゆずの昔の曲歌ってたな、あれいい曲だったな、と思い、調べて聞いてみた。

ゆずの「サヨナラバス」である。

歌を聞きながら歌詞を追っていた私は戸惑った。サヨナラバスは、長い付き合いの二人がなんらかの理由で離れ離れになる(進学だろうか。)ことになり、見送りに来た片方が相手と離れる寂しさを歌う、そんな歌であった。「やっぱり君が好きなんだ」などと、離れる直前になって自分の恋心を自覚したりしている。

え、これ、告白?????????

Aさんがこれを歌っていた時、私は何をしていたのだろう。デンモクでも見ていたのだろうか。曲が終わったときに、「いい歌だね」と言った気がする。いい歌だね、じゃないよ。

そういえば、いつもは私に興味の無いように見えるAさんが、私がビールを好んで飲むようになったことに気づいたり、異動日や異動先にいつまでいるのかを聞いてきたりしていた。これは脈ありなのか?

…と思ったけれど、ライン既読無視されてるの思い出して、我に返りました。

春菊の茎のうまさよ

以前、神楽坂の高級なお店で、分不相応にも高級な鳥なべをいただく機会があった。

そこで私は春菊のおいしさに目覚めてしまったのである。

目覚めたとはいえ、今まで特に何もしていなかったのだが、ある日ふと、あ 春菊食べたい、と思った。

食べるからには春菊を一番おいしい状態で食べたいと思い、検索してみると、どうも春菊は葉と茎を分けて調理するのが「常識」であるらしい。更に玄人によれば、包丁は使わずに葉と茎をわけるべし、とのこと。苦くなるのを防ぐためだそうな。

早速春菊を入手。雑な性格である私は、素手で葉を茎からぶちぶちとむしり取り、茎部分をいい感じの長さに切って、油抜きした絹厚揚げを入れただし汁(白だしをいい感じに薄めただけです)にぶち込み、さっと煮、味見した。

まじでおいしかった。

甘い。火の通り加減も最高で、柔らかい。アスパラのやわらかいとこみたいな。
私天才じゃね、と思いながら、葉も入れ、10秒くらいで火を止め、絹厚揚げと食べたところ、春菊の香りも味も素晴らしかった。

リピ確です。

 

これが愛か

先日、好きな人と会った。

お昼を食べようということで休日の昼に待ち合わせたのだけれど、レストランが家から遠かったためか、Aさん(好きな人のことを便宜上こう呼ぶことにします)は眠そうだった。

顔がむくんで、まぶたがすこし腫れていた。

そのすこし腫れたまぶたと、細くなった目を見て、ああかわいいなあと思った。そして、あ、これが愛か、と思った。脈も無いしあきらめようと思っていた矢先に、愛を実感してしまった筆者の運命やいかに。